遺言書間違いのイメージ

昔に比べ、最近では遺言書を作成される方がとても増えてきました。遺言書の管理の手続きや検認等についてはまた後日解説するとして、今回は遺言書の書き方落とし穴を中心に解説します。

 

遺言書を作成するメリットは主に以下の3点です。

 

  •     遺産をめぐってご家族内で紛争が起るリスクを回避する事が出来る。
  •     相続発生後に遺産分割協議を経ず、遺言書によって手続きを進める事が出来る。
  •     あなたの「想い」を大切な家族に伝える事ができる。

 

このように利用価値の高い遺言書ですが、実は一般に普及した反面、正しい知識のないまま遺言書を作成される方が増えており、ミスの多い遺言書が目立つようになりました。

そこで今回は、自筆証書遺言を作成する際に、これだけは気をつけてほしい、よくあるミスと対処法について解説致します

正しい遺言書作成の際にぜひご参考ください。

 

 

■遺言書作成時の落とし穴1:遺言書が無効になってしまうケース

 

遺言書法律で決められた正式な書類(※後日、遺言書と遺書の違いについても記事を書きたいと思います)ですので、一定の要件を満たさなければ遺言書として成立しません。

遺言書の効力がなくなってしまいます。

 

素人が作成した遺言書でよくあるミスのパターンは以下の通りです。

 

○遺言書自体をワープロ(パソコン)で書いている。

 

自筆証書遺言はご自身の直筆が大前提です。すべてを直筆で書かなければそれは遺言書として成立せず、ただの手紙、メモになってしまいます。作成する際には、必ず直筆で書いて下さい。

 

○作成年月日が漏れている。

 

これも非常に多いミスです。遺言書は作成した日付が特定できなければ、無効となります。例えば「3月吉日」と言った表現については日付が特定できないため、無効となりますので、はっきりと年月日を記載するようにして下さい。

 

○署名捺印がない。

 

すべて直筆で書いても、最後にご自身の署名と印鑑がなければそれは遺言書として通用しません。最後に必ず署名捺印を忘れないようにしましょう。

 

逆に、これらがすべて整っていれば、チラシの裏に書いたような遺言書でも有効となります。

 

大切な事はこれらの要件をすべて満たしている事なのです。また、遺言書は一度書いても、ご自身が生きている間であれば好きな時にその内容を変更する事が出来ます。

その方法は簡単。さらに新しい日付の遺言書を書いて内容を上書きすれば良いのです。

 

 

【ワンポイント講座】

 

親族間の中が悪く、相続発生後確実に遺言書の内容をめぐって争いが起ると予想される場合は、公正証書によって遺言書を作成する事をお勧めします。

そうは言っても費用が高くなるため、どうしても自筆証書遺言で作成したいという場合は、遺言書の作成状況を動画で撮影してUSBなどで一緒に保存しておきましょう。

 

なぜなら、遺言書の内容が気に食わない一部の相続人が、

 

「この遺言書は、母が認知症になってから長男に言われて無理矢理書かされているから無効だ」

 

というような主張をしてくるケースが多々あります。実際、これが本当であれば、遺言書は無効となります。

 

言いがかりのように聞こえるかもしれませんが、お金が絡むと人間は必死になるのです。ですから、これくらいの紛争は日常茶飯事に起きています。

 

そこで活躍するのがその動画です。

相続人自身が自分の意思によって書き始め、自分の意思によって書き終える様を記録しておく事で、このような訴えをされた場合にも対抗することができます。

これは、一部の弁護士も実施していることですので是非参考にして下さい。

 

 

 

■遺言書作成時の落とし穴2:無効にはならないが、トラブルとなるケース

 

○内容が一方的すぎる。

 

例えば、「すべての財産を長男に相続させる」と書けば、遺言書としては有効ですが、次男などから強い反発が出る恐れがあります。

一部の相続人には遺留分という保護された領域があり、それを侵害する遺言書を残すと、他の相続人が遺留分減殺請求権を行使して争う事になる可能性もあります。

 

かと言って、あまりにも相続人に気を遣った遺言書ではご自身の意見が反映されません。そこでこのような場合に紛争を回避するコツがあります。

 

【ワンポイント講座】

 

このような場合には、遺言書に「付言(ふごん)」を書き添える事をお勧めします。付言とは、遺言書を書いている人の気持ちを書き添える事です。

 

例えば

「これまで私を介護してくれた長男には深く感謝している。本当に大変な思いをして私を最後まで世話してくれた。だから私の財産は長男に相続してほしい。次男もそれを理解してこの遺言を受け入れてほしい」

 

と、まあこんな感じです。付言自体には法的な効力はありませんが、こう言った気持ちを伝えるという事も紛争を防止する視点からするととても重要なのです。

 

○相続と遺贈の記載ミス

 

例えば法定相続人が妻と息子の2人の場合に書く遺言書に、

 

「実家の土地は私の妹に相続させる」

 

と記載すると、その部分は法的には無効となります。

なぜでしょう。

それは、この場合、妹は相続人ではないため「相続させる」ことはできないのです。相続させる事が出来るのは、あくまで法定相続人だけなのです。

法定相続人以外の人間に財産を残したい場合は「遺贈」という表現になります。ですからこの場合妹さんについては「遺贈する」と記載するのが適切となります。

 

 

このように、自筆証書遺言はいつでも簡単に作成できますが、一歩間違えれば本来の目的を達成できないこともあります。遺言状の書き方は想像以上にややこしいとお思いになったのではないでしょうか。

 

万全を期すのであれば、必ず弁護士に相談しましょう

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