終活ブームが到来した昨今、自分が死亡したときのために、予め遺言書を作成される方が増えてきました。
中には遺言書作成キットなる商品も発売され、規定の用紙に沿って内容を記載するだけで、法的に有効な遺言書が作成出来るなんていうものまであります。
自分自身にもしもの時があっても大丈夫なように、エンディングノートを書く方も大勢いるようです。
それだけ相続や遺言書は私たちにとって身近なものになりつつあります。
そんな中、ちょっと気になる下記のような質問をネット上で見つけました。
「もしも財産を妻や子供ではなく、愛人に全部譲るって書いても、それって法的に有効なの?」
今回はこの疑問について、バシっとお答え致します。
■遺言書は原則、何を書いても良い!
直筆で作成する遺言書のことを自筆証書遺言と言いますが、この遺言書は
○ 作成年月日
○ 遺言者の署名捺印
○ 全て直筆で記載
この条件さえ揃えば、何を書いても原則有効です。
つまり、
「すべての財産を愛人Xに遺贈する」
と記載しても、それは有効なのです。
その他にも。
「全財産を、ユニセフに寄附する」
というのも有効です。
それだけ遺言書には絶対的な効力があるのです。
■残された家族は保護されないのか。
では、万が一、第三者である愛人Xに夫のすべての財産を遺贈されてしまったら、残された妻と子供はどうやって生活をしていけば良いのでしょうか。
確かに故人の意見は尊重されるべきですが、妻や子供にも夫の財産を受け取る正当な権利はあるはずです。
いえ、あるべきです。
そこで民法は、このような一方的に偏った遺言書が発見された場合に備えて、予め「遺留分」という制度を作りました。
■遺留分は、絶対領域。
遺留分とは簡単に言うと、有効な遺言書によっても侵害することのできない絶対的な相続分の事です。
遺留分が認められているのは、被相続人の財産を相続できないと困る可能性が高い相続人のうち、配偶者、子、そして直系尊属のみで、影響の少ない兄弟姉妹にはありません。
例えば、相続財産総額が3000万円だと仮定します。
妻一人、子供一人の場合、相続分は通常次の通りです。
妻1500万円 子供1500万円
しかし、遺言書で愛人にすべての財産を遺贈された場合、遺留分は相続財産全体の1/2となります。
つまり、
3000万円×1/2=1500万円を妻と子供二人で分けます。
つまり、妻750万円 子供750万円がそれぞれの 遺留分となるのです。
■遺留分は、当然に貰えるものではないことに注意!
このように、妻や子供、直系尊属には遺留分があるため,一方的な遺言書が見つかったとしても、最低限の生活費などは確保できそうな事は分かりましたよね。
但し、この遺留分、何もせずに自動的に貰えるわけではありません。簡単に言うと、一方的な遺言書が見つかった段階で
「私は遺留分の権利を主張します」
と言ってその権利を愛人に対して「行使」しなければならないのです。
そしてその行為のことを、「遺留分減殺請求」と言います。
遺留分減殺請求は、裁判外でも可能です。
通常は内容証明郵便等で作成し、相手方に郵送します。
■遺留分減殺請求には期限がある!
遺留分減殺請求は、未来永劫いつでもできるわけではありません。
この権利は、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間行使しない場合は、時効によって消滅してしまいます。
また、相続開始の時より10年を経過したときも同様に時効となります。
そのため、万が一自分自身の遺留分を侵害する一方的な遺言書が見つかった場合は、すぐにでも弁護士に相談し遺留分減殺請求権を行使しましょう。
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