相続放棄と遺留分滅殺請求のイメージ

■相続放棄は生前に可能か!?遺留分放棄と遺言書の関係

例えば、息子に財産を渡したくない親が、生前に息子に対して「お前には財産をあげたくないから、おれが生きているうちに相続放棄をしろ」と言えるのでしょうか。

実は、このように「財産を相続させたくない相続人がいる」という相談は思いのほか多く、生前に相続放棄をさせたいという希望をよく頂きます。

 

■ズバリ、生前の相続放棄できない!

まず結論から言うと、生前の相続放棄は「できない」です。

例えば、「両親が借金まみれで、絶対に相続したくないから、今のうちから相続放棄をしておきたい」という理由でも認められません。

日本では、生前の相続放棄は「できない」「不可能」なのです。

 

そもそも人生は何が起るか分かりません。

たとえ借金まみれの両親だとしても、明日サマージャンボが当選して大金持ちになるかもしれません。つまり、生前に相続放棄をする事は、相続放棄をする本人にとって何のメリットもないのです。

 

■遺留分放棄とは?遺言書と注意点

「知り合いから生前に相続放棄できるって聞いたんですが…」これも良く聞くご質問ですが、それは相続放棄ではなく、「遺留分放棄」です。

生前の相続放棄はできませんが、生前の「遺留分の放棄」は可能です。

 

何が違うの?と思うかもしれませんが、法的な効果はかなり違うのが注意点です。

 

そもそも相続放棄とは、放棄すると「はじめから相続人ではなかった事」になりますので、一切の財産を相続する権利を失う事になります。

これに対し「遺留分放棄」は、相続人としての地位には何ら影響はありません。放棄するのは、遺留分を主張するという権利についてだけです。

 

【マメ知識:遺留分とは?】

遺留分とは、一部の相続人が絶対的に相続できる最低限の相続分のことです。

例えば、父親が子供や妻がいるにも関わらず、すべての財産を愛人に遺贈する旨の遺言書を残して死亡した場合、法的にはその遺言書は有効ですので、何もしなければすべての財産は愛人の手に渡ってしまいます。

でも、これって普通に考えて不公平ですよね。

きっと残された妻と子は父の残した財産が、今後の生活のために必要なはずです。そこで法律は、このような事態にそなえて「遺留分」という遺言書によっても侵害できない絶対的に保護される領域を作ったのです。

このケースでは、妻と子供に1/4ずつの権利が遺留分として認められます。

 

また、この遺留分は当然に与えられるものではなく、遺留分権利者が自ら権利を行使して、主張しなければなりません。これを法律用語で「遺留分減殺請求」と言います。

 

■遺留分放棄するとどうなるの?遺留分減殺請求

先ほども申し上げたように、遺留分を放棄しても、相続人としての地位は失わないため、通常通り財産を相続する事ができます。

遺留分の放棄とは、分かりやすく言うと「遺留分減殺請求をする権利を予め放棄する」という事なのです。

 

ですから、一方的な遺言書が出てきたとしても、遺留分を放棄している場合はそれに対して文句が言えなくなるという事なのです。

遺留分を放棄させる事が出来れば、遺言書を書く側からすれば、遺留分減殺請求のリスクがありませんから、自由に財産を振り分ける事が出来ます。

 

■遺留分放棄は、本人の意思が必要。

当然の事ですが、両親が息子に対して遺留分放棄を強制する事はできません。基本的に遺留分放棄は、放棄する本人にはメリットがほぼありません。ですから、遺留分放棄の申立てを家庭裁判所に行なうと、裁判所から本人に対し、本当に遺留分を放棄してよいのか、またなぜ放棄するのかについて細かく確認されます。

そのため、適当に本人を言いくるめて強制的に遺留分放棄させる事は事実上不可能です。

 

通常遺留分を放棄する場合というのは、それ相応の生前贈与をすでに受けていて、本人がこれ以上の相続を望んでいないような場合に限られるでしょう。

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