遺言書・遺書・いごん・ゆいごん・よくある質問イメージ

遺言書というと、「縁起でもない」「そんなもの書くものじゃない」などというイメージが未だに強くあります。また、テレビドラマの中でよく登場するためか、どこか現実的なイメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。そこで今回はこの遺言書に関する「よくある疑問・質問」についてお答えします。

 

■そもそも遺言書は「誰が」書くのか。

 

遺言書は財産を残す事になる「被相続人」つまり、亡くなる方が生前に書くものです。なぜこのような基本的な事をあえて言うのかというと、ときどきそのご家族の方から「被相続人に遺言書を書かせたい」というご相談が法律事務所に持ち込まれる事があるからです。正直に言うと、遺言書を「書かせる」ことはできません

遺言書は、あくまで本人の「意思」で書くからこそ法的効力が発するのです。正直なところ、先ほどのようなケースでは、遺言書を書かせたいご家族の、「なにか一発狙っている感」がいなめません。

ですから、遺言書は大前提として、本人自らの意思によって書くものなのです。

 

裏を返せば、被相続人は遺産相続の争いを未然に防止するために、自ら率先して遺言書を書く責任があるのです。ご家族は、あなたに対して「死ぬ前に遺言書を書いて」などという不謹慎なことを、口が裂けても言えないでしょう。ですから、遺言書の作成は残される家族に対してできる最後の「愛情表現」であると考え、率先して行ないましょう。

 

■遺言書の有効・無効の境界線とは?

 

「遺言書は専用の用紙があるのですか?」と聞かれますが、そのようなものはありません。極端な話で言うと、その辺の広告の裏、便せん、メモ用紙に書いても遺言書は有効に成立します。縦書き、横書きも関係ありません。それでも、遺産相続が発生して遺言書が発見されると、そこそこの確率でその遺言書が法的には効力のないいわば「無効」となる場合があります。

 

○よくある遺言書の無効原因

  • 本人が直筆で書いていない。
  • 本人の署名押印がない。
  • 遺言書を作成した日付が明記されていない。

 

ちなみに、一般的に言われている遺言書は正式には「自筆証書遺言」といい、本人がすべて直筆で書く事が前提となっています。(※秘密証書遺言の場合は、ワープロでも可)

上記の要件のうち1つでも抜け落ちていると、その遺言書はただの紙切れ同然なのです。

 

■遺言書と遺言状ってちがうの?

 

これもよく聞く質問ですが、「同じ」です。どちらのタイトルで書こうが、先ほど述べた「よくある遺言書の無効原因」をクリアしていれば、「遺言書」でも「遺言状」でも効力に変わりはありません。

 

なお、読み方についてですが「遺言」と書いて「いごん」「ゆいごん」二つの読み方があります。簡単に言うと「いごん」は法律用語で「ゆいごん」は国語表現というだけで、大きな違いはありません。通常、遺言書を扱う弁護士や行政書士は「遺言」のことを「いごん」といい、国語教師であれば「ゆいごん」というだけの違いです。

一般的には「ゆいごん」のほうがドラマなどで馴染みがあるため、弁護士の中にはあえて「ゆいごん」と表現している先生もいます。ちなみに、相続には「遺言(いごん)」という単語が入る言葉がたくさん出てきます。そのため、「いごん」という読み方を覚えていないと、法律相談をしていても、弁護士が何の事を言っているのか分からなくなる場合がありますので注意しましょう。

 

■遺書と遺言書って違うの?

 

遺書遺言書は類義語のように使用されるケースも多々ありますが、実はまったくもって別物です。

 

1:遺書とは?

 

最近では悲しい事にいじめを苦に自殺をした学生が、いじめの悲惨さを語った遺書を残すことがあります。ほかにも、飛行機が墜落するかもしれないという時に、慌てて家族に向けて感謝の念を遺書にしたためるケースもあります。

つまり、遺書とはこれから亡くなるかもしれないという状況下のもとでしたためる「手紙」や「メッセージ」のことです。ですから、その内容も基本的には本人の怒り、悲しみ、憤り、または感謝、お礼などの「感情」を表現しています。

法的な定義はありませんので、遺書を残したからといって、遺書の書き方いかんによらず、遺産分割協議には何ら影響はありません。影響を与えるのは人の感情にただ訴えかけるだけです。結局、遺書もダイイングメッセージと呼ばれるものも、メモ同じく法的効力はありません

 

 

2:遺言書とは?

 

これに対し遺言書は、民法に規定がある法的執行力のある正式な書類です。記載する内容は、遺産分割に関する内容であり遺書のように本人の感情を記載することは基本的にはありませんし、もし記載したとしても法的には何の意味もありません。

必須記載事項も民法で定められており、その規定に則った様式で作成されていなければ、たとえタイトルが「遺言書」や「遺言状」となっていても、実際には上記の遺書と同じ扱いとなってしまい、遺産分割協議上は何の役にも立たなくなってしまいます。

 

このように、遺書は「ただの手紙同然」で遺言書は「法的執行力のある正式な書類」で全くの別物なのです。そして弁護士がその作成をサポートするのは遺書ではなく法的執行力のある遺言書です。

ちなみに、遺言書にも遺産分割に関する内容以外にも、遺族に向けてメッセージを残す事ができます。これを「付言(ふげん)」といい、それを残したからと言って法的な効力にはなんら影響はありませんが、例えば、

「全ての財産を長男に相続させる」

という内容の遺言書を残す場合、おそらく相続開始時に次男からの反発が予想されます。そこで、「なぜ」長男に全部相続させるという決断に至ったのかの理由を「付言」として記すことで、次男が納得するきっかけとなるのです。

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