【成年後見人】とは？成年後見は弁護士に依頼しよう（入門編）

成年後見人・高齢者財産管理イメージ

■成年後見人・成年後見制度とは？

皆さんは「成年後見」という言葉をご存知でしょうか？
あまり聞き慣れないという人もいれば、介護施設の職員の人から聞いたなんていう人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、この成年後見について詳しく解説したいと思います。

○成年後見制度とは

成年後見制度とは、簡単に言うと知的障害、精神障害、発達障害、認知症、痴呆症などの「精神上の障害」が原因で判断能力が十分ではない人を、法的に保護しようという制度です。

例えば、認知症にかかってしまったご高齢者がいたとします。認知症ですから、正常な判断能力はありません。そのため、突然近所を歩いていた人に「私の家をあなたに１,０００万円で売ります」と言ったとします。これを言われた人が真に受けて「買います」と言って承諾すれば法律上は契約が成立してしまいます。（今回は金額の妥当性は無視して考えてください）

ただ、本人は正常な判断能力がない認知症患者ですから、本心から口走ったことではないでしょう。

ただ、このままだと法律上は売買契約が成立してしまいます。そこで登場するのが成年後見制度です。この制度を利用して、予め家庭裁判所に申立てを行なうと、「成年被後見人」となり、法的な保護を受けられます。具体的には、今回のようなケースにおいては「取り消します」と一言言うだけで、契約を一方的に取り消す事ができるのです。

法律には、成年被後見人がした法律行為は、日用品の購入やその他日常生活に関する行為以外の行為については、成年被後見人であるという理由だけで取り消す事ができると規定されています。

○成年被後見人となるには？

成年被後見人となるには、成年後見の申立てを「本人の住所地の家庭裁判所」に対して行ないます。なお、申立てに当たっては以下のような書類が必要となります。

【申立てに必要な主な書類】

申立書
申立人の戸籍謄本
本人の戸籍謄本、附票、登記事項証明書、診断書
成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書
申立書付票

また、これら以外にも必要に応じてさまざまな書類の提出を求められます。

成年後見の申立て手続きは非常に複雑なため、一般の方が自ら申立てるのには馴染みません。利用する際には出来る限り「弁護士」に依頼する事をおすすめします。

○成年後見人って何をするの？

成年後見の申立てをして認められると、本人が成年被後見人となる代わりに別途成年後見人が選任されます。これは、本人の家族がなる場合もありますし、弁護士などの専門家が選任される場合もあります。

成年後見人は裁判所が諸般の事情を考慮して選任します。

成年後見人は、認知症や痴呆症にかかってしまわれた方に変わって、本人のために財産を管理する役割を担います。

最も多いケースとしては、預貯金の管理や保有する不動産の管理などです。なお、成年後見人がちゃんと本人の利益のために財産を管理しているかを定期的に裁判所が成年後見人から報告を受けて監督します。

○どんな時に成年後見を申立てるの？

実務上、成年後見の申立てが行なわれやすいパターンとしては以下の２つのケースがあります。

その１：介護施設との契約

ご高齢のご両親に介護施設（高齢者介護施設など）に入所してもらおうと手続きに行ったところ、介護施設の職員から、先に成年後見の申立て手続きをするようアドバイスされるケースがあります。

その２：相続を原因として

例えば夫が死亡した際に、法定相続人の妻が認知症であるといった場合は、成年後見の申立て手続きを「先に」しなければ「遺産分割協議」を進める事が出来ません。

大切なご家族のためにも、申立ては早めが重要です。

成年後見の審判によって、成年被後見人として認められるまでには、一般の方が考えているよりも非常に煩雑な手続きを経なければなりません。また裁判所において本人が面接をされるなど、さまざまな手続きを行ってようやく認められることになります。そのため、専門家のサポートなしでこの手続きを行うと、非常に多くの時間がかかってしまい、その後に控えている契約手続きや相続手続きに大きな支障をきたしてしまいます。

相続関係の手続きには、期限があるものが多いため、ことのほか早期に手続きを完了することが重要です。そのため、成年後見の申立て手続きが必要となった場合は、出来る限り専門家である弁護士に依頼しましょう。