遺産相続の事前対策として、遺言書(一般にエンディングノートと呼ぶ方もいますが、こちらは法的拘束力が無いものをさすことが多いようです)が有効な事はすでに有名な話になりつつありますが、では「財産目録」という書類についてはご存知でしょうか。実は遺言書を書く場合、この財産目録も一緒に作成するとより効果的です。
今回は、適切な終活(エンディング)を実施するために、この財産目録について分かりやすく解説します。
■そもそもなぜ財産目録が必要なのか。
あなたはあなたのご両親が、どこにどのような財産を所有していて、どのような借入をしているのか正確に答えられますか?
おそらく難しいのではないでしょうか。仮に分かったとしても、印鑑や通帳、権利証等の補完場所までは分からないと思います。このように、たとえ家族であっても、知らない事、知らされていない事がたくさんあるということをまず認識することが大切です。
大切なご家族がお亡くなりになると、遺産分割協議をするために、まずはどのような財産を所有していたのかを相続人が調査しなければなりません。実はこの作業が非常に大変なのです。
そこで登場するのが「財産目録」です。
財産目録とは、遺言者が所有している財産の詳細を事細かく記した財産の一覧表の事です。特に決められた書式があるわけではありませんが、どのような財産があるのかを、誰が見ても分かるように記載する必要があります。
最近ではNISA(ニーサ)と呼ばれる少額投資非課税制度を利用した投資信託が、個人でも比較的簡単にできるようになりました。ネットバンキングも広まり、複数の口座を使い分けている方も多いようです。こうした一つひとつの「財産」の在りかを明らかにしておくことが必要です。
■財産目録に書くべき項目とは。
【財産目録に記載すべき財産について】
○現金、預貯金
その金額はもちろんの事、現金であればどこにあるのか。預貯金であれば銀行、支店、口座番号、印鑑や通帳の置き場所などまで記載します。また、ネットバンキングを利用している場合はパスワードや合い言葉が必要になるケースがあります。それらもすべて記載しておきましょう。
○不動産
所有している不動産の名称、住所、地番、面積、権利関係(借地権、地上権、賃借権、抵当権など)事細かく記載します。また、権利証の補完場所も明記しましょう。
○動産
車、貴金属類、骨董品など価値のある品物は相続財産となります。補完場所まで細かく記載しましょう。文字のみで記載するのが難しい場合は、写真等を添付するのも良いでしょう。
○有価証券
株式、国債、手形、ゴルフ会員権などがこれに該当します。証券会社や担当者の名前まで記載しておきましょう。
○その他債権
誰かにお金を貸していたり、未払いになっていたりする債権があれば記載します。
○生命保険金
受取人が遺言者本人になっている場合。
○その他事業資産など。
また、財産目録のポイントは、これら「プラスの財産」だけではなく、次に記載する「マイナスの財産」についても記載しておく必要があります。
- 借金
- ローン
- 誰かの保証人、連帯保証人になっている場合はその旨
- 損害賠償の債務があればその旨
- その他買掛金など
これらのマイナスの財産は、残された家族の調査だけでは気がつかない場合がありますので、必ず記載しておきましょう。
ちなみに、公営住宅の使用権は相続できませんので、本人が死亡した場合は退去しなければなりません。また、墓地、仏壇、位碑、遺骨、香典、などは相続財産とみなされません。
相続発生時に財産目録があれば、相続人の財産調査にかける労力が大幅に軽減されますので、とても重宝します。この財産目録の内容をもとに、換価分割、代償分割、現物分割などの遺産分割方法を話し合って検討する事になります。
■財産目録を見ながら、遺言書に具体的に記載する。
遺言書を記載する際に財産目録があると、記載漏れがなくなりより適切な遺言書を作られるようになります。
例えば、不動産の相続について記載する際に、
「東京のマンションは長男に、埼玉の土地は次男に相続させる」
と記載しただけでは財産が正確に特定できません。遺言書は、家族が見て意味が分かるだけではダメなのです。遺言書は、相続発生時に「遺産分割協議書」の代わりとなる書類です。そのため、銀行口座や不動産の名義変更や払い戻し請求などを行なう際にも、この遺言書を添付する必要性が出てくる場合があります。その時に、記載内容が曖昧だと、場合によっては別の書類の提出を求められる可能性もあります。
ですので、実際に記載するときは財産目録と同じように細かく記載しなければなりません。
「東京都新宿区・・・丁目○番地所在、宅地○○平方メートル、同所同番地所在の鉄筋コンクリート2階建てマンション101号室 マンション名」
と言った感じで疑う余地もなく財産が特定できるように記載しましょう。
しかし、こうした財産目録や遺言書を一人で作成することを考えると気が遠くなるのではないでしょうか。しかも、間違いや記載漏れがあっては意味がありません。
そこで出番となるのは弁護士の存在です。何かとトラブルが起こりやすい遺産相続において、弁護士が介入することで、問題の解決が早まることが多いのです。遺言執行者には弁護士を選任しておき、遺言書や財産目録を作成するにあたっては、予めその弁護士に相談をしておくことが望ましいでしょう。
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