遺言書の作成をしようと思い立って弁護士事務所を検索していると、こんな言葉をみかけたことありませんか?
「当事務所で遺言書を作成頂いた場合は、遺言執行者についても対応致します」
遺言書の意味はなんとなくわかると思いますが、「遺言執行者」ってあまり聞き慣れない言葉ですよね。
これって弁護士にお願いした方が良いのでしょうか。またお願いすると、どんなメリットがあるのでしょうか。
■遺産相続の「総合司会者」、それが遺言執行者です。
遺言執行者を一言で表現するとすれば、それは「総合司会者」です。遺言書が発見された場合、そこに書いてある内容を実現するために誰かが相続手続きを取り仕切らなければなりません。
これには2つのケースがあります。
○その1:遺言執行者がいない場合
遺言書に遺言執行者の指定がされていない場合は、原則、相続人全員で共同して行なう事となりますが、これはつまり司会者のいないバラエティ番組も同然で、実はかなり厄介な状態なのです。
そもそも遺産相続が開始すると、それまでは連絡すらよこさなかったような兄弟達が、少しでも多くの遺産を手に入れようとして集まってくるものなのです。
それに加え、遺言書を残しているという事は、亡くなった被相続人が何らかの意図があって(つまり、法定相続分とは違う分け方など)書いている可能性が高いため、その遺言書の内容をめぐって相続人間でいがみ合い等の紛争が発生する可能性が高いのです。
そうなると、必然的に遺言の執行に非協力的な相続人が現れる事となり、いつまで経っても相続手続きが進まないという事態が発生します。遺産相続の手続きが長引いてしまいます。
○その2:遺言執行者がいる場合
これに対し、遺言書に「遺言執行者はX弁護士とする」という内容の遺言書が発見された場合は、以後の手続きの進行役はその選任されたXが行なう事になります。
遺言執行者には、「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務」が与えられます。
そのため、遺言執行者が指定されている場合は、たとえ相続人本人であっても相続財産を勝手に処分したり、遺言執行を妨害したりするような行為は一切許されません。万が一これに反して相続人が勝手な真似をしてもすべて無効となります。
遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者が遺産相続の総合司会者となって、各相続人に状況を適切に説明しながら、相続に関連するあらゆる手続きを代行してくれるのです。
そのため、たとえ反対する相続人がいたとしても、遺言書が有効なものであれば、それを無視してどんどん進める事も可能です。
つまり、遺言執行者を依頼するという事は、相続手続きの迅速性を担保できるとともに、自分の書いた遺言書を弁護士という中立的立場にある法律の専門家が、確実に実行してくれるという大きな安心感を得ることができるのです。
ですから遺言書の内容に遺言執行者を記載しておくことは非常に有意義であると言えます。
ちなみに、遺言執行者は弁護士でなくとも遺言書で指定されていればなる事ができます。(但し、未成年者や破産者はなる事ができません。)
■遺言執行者って具体的にどんなことをするの?
- 相続財産をリスト化(財産目録)し、各相続人へ通知する。
- 遺贈がある場合は、受遺者に連絡しその旨を伝える。
- 遺言による認知、相続人の廃除などがあった場合の手続き。
- その他相続財産の管理と執行に必要な一切の行為。
■遺言書に遺言執行者が書いてないけど、今から誰かに頼めない?
遺言執行者は指定しておくと、相続人にとっては非常に便利で多くのメリットがありますが、万が一遺言書に遺言執行者が記載されていなかったらダメなのでしょうか。
ご安心下さい。遺言執行者は、遺言書で指定する以外にもう一つ方法があります。
それが「家庭裁判所による選任」です。
つまり、家庭裁判所に誰か適当な人物を遺言執行者として指定して下さいと請求する事ができるのです。
これを「遺言執行者選任申立て」と言います。
この手続きは、遺言書に指定がない場合だけではなく、指定されていた遺言執行者がその就任を辞退したり、またはすでに死亡していたりするような場合にも用いられます。
弁護士が選任される場合もあれば、申立人が候補として記載した人が選任される場合もあります。
このように、遺言執行者は遺産相続の手続きにおいて非常に重要な役職であり、相続人の負担を軽くするためにはなくてはならない存在でもあります。
とは言え、法律に詳しくない一般の方が遺言執行者になると、知識的にも時間的にも負担がかかることが多いでしょう。
ですから、遺言書を作成する場合は、できる限り相談した弁護士などに執行を依頼することをおすすめします。
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