被害者の過失

交通事故では、賠償額を決めるにあたって、被害者の過失が問われることがあります。「過失割合」とか「過失相殺」という言葉がそれです。
「過失相殺」とは、交通事故の発生について被害者側にも過失がある場合に、公平の観点から、事故発生に対する被害者の過失の割合に従って、加害者が負担すべき賠償金額を減額することをいいます。

例えば、交通事故で被害者に生じた損害額が100万円の場合で、交通事故の発生について被害者に3割の過失があると認定されたとします。損害額である100万円のうち、過失相殺により損害額の3割が減額されますので、あなたに支払われる賠償金額は損害額の3割である30万円を差し引いた70万円になります。このように、被害者に過失があるか、あるとしてその過失割合がどの程度であるかが、賠償額を決定するにあたって非常に大きな影響を持ちます。

過失割合はどのように決められるのでしょうか

では、過失割合はどのように決められるのでしょうか。過失割合の算定にあたっては、過去の裁判例をもとに作成された、事故類型ごとの過失相殺率の基準値を示した「過失相殺基準表」が、実務上参考にされています。民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準【東京三弁護士会交通事故処理委員会他編】とか、交通事故損害額算定基準【(財)日弁連交通事故相談センター編】などです。保険会社も、この過失相殺基準を参考に被害者の過失を認定しているようです。
しかし、被害者に過失があるかどうかの判断は時として、両当事者の言い分がくい違う場合もあり、容易なものではありません。加害者は「被害者側に過失がある」と主張するにあたり、過失があるという判断のもととなる事実(たとえば、赤信号なのに横断していた、合図をせず右折した、など)を指摘します。このように、被害者に過失があるかどうかは、加害者が過失の根拠として主張する事実の存否など、事故発生当時の詳しい状況を様々な資料をもとに検討することによって初めて判断可能となるものです。そのため、過失について争いがある場合、被害者が被害者の過失の根拠となるような事実は存在しないということを説得的に主張していくことが不可欠であり、そのためにはその主張を裏付ける証拠としてどのようなものがあるのかを吟味しなければなりません。その際、事後直後から証拠を保全するということも重要になってくるでしょう。当事務所が扱ったケースで、車載カメラで、当方の過失がないことを証明できたケースがあります。
また仮に被害者側に過失となる事実があり、過失相殺がなされるべき場合であっても、被害者側の過失を何割と算定するのかは事故の具体的状況に応じてさまざまであり、画一的に定まるものではありません。被害者の過失となる事実がどのようなものであるかは過失割合の判断においてはもちろん重要ですし、加害者の行動も過失割合を修正する要素となる場合があります。このように、過失割合を決するにあたっては事故発生に関する様々な事情を総合的に考える必要があります。
そうしたときに、保険会社の主張する被害者の過失割合は被害者にとって不利に算出されている場合も多く、事案に照らすと不適切な割合が提示されていることもあります。
ただ、大多数のケースでは、先の「過失相殺基準表」を適用することで、決着されております。この「過失相殺基準表」では、例えば、車対歩行者の事故で、歩行者が横断歩道付近を横断し車にはねられた場合の歩行者の基本過失割合は、25%とされています。ただ、これで終わるのではなく修正要素があり、事故の時間が夜間の場合は、歩行者の過失が5%増加し、30%になります。逆に、事故現場が住宅または商店街の場合は、歩行者の過失が10%減少し、15%になります。このように、具体的事情により、過失割合が変わってきます。

保険会社から過失を言われた場合は、保険会社の言い分を鵜呑みにせず、弁護士に相談しましょう。エクレシア法律法律事務所は、無料でこういったご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。