交通事故で受傷後、相当期間治療を受けていたが、何らかの事情(痛みが引いたのでもう大丈夫という自己判断、多忙で通院できない、お金がなかった等)で治療を中断後相当日数が経過してから、再度痛みが出て治療を再開したい場合に、保険会社の対応はどうでしょうか。被害者本人の感覚からすれば、このような痛みは、事故があってからのことだから、当然、事故が原因であると感じられるでしょう。しかし、このような通院の場合、保険会社は必ず一旦中断した後の治療と事故との因果関係を争い、治療費の支払いを拒否することがほとんどです。
問題は、再開後の治療と事故との因果関係です。判例は、中断したことについて合理的な理由があるか否か、既存の他の障害など再開後の治療と事故との因果関係を疑わしめるその他の事由があるか否か、中断期間中症状が継続していたか否かなどの事情を検討して因果関係を判断する立場から、頸椎捻挫、両膝打撲の障害を負った被害者が入通院治療を行ったが、事故後16日後から約3か月半通院の中断がある事案で、治療再開以降の通院治療の必要性、相当性を認めています(東京地判平成13年5月29日)。
痛みを抱えた被害者として当面の対応はどうすべきでしょうか。担当医から、今回の症状は事故によるものとの意見をもらい、その意見を元に、保険会社に事故との因果関係を納得させる方法によるべきでしょう。それでも保険会社が認めない場合は、背に腹は代えられないので、自費で治療するしかありませんが、後に(裁判等で)事故との因果関係が否定される可能性もあるので、自腹負担を安く抑えるためにも、健康保険を使って治療することをお勧めします。このように、自腹負担の可能性を秘めながら、治療再開することは、治療費打ち切り後の治療継続等と同じ状況にあります。