概略

死亡の半年後に、被相続人が住んでいた市から「市・県民税の相続人確認」書面が送付されて来て未払い住民税が判明したので相続放棄

 

相談者

被相続人の子

 

相談前

被相続人は平成28年5月8日に死亡し、Aさんは親戚からその旨の連絡を受けたので、被相続人の葬儀には出席しました。ただ、親戚から被相続人に財産は何も無いと聞かされたので、特に相続の手続きをしませんでした。

ところが半年後の平成28年11月9日、Aさん宛てに被相続人が住んでいた甲市から「個人市・県民税の相続人に関する調査について」という書面が届き、被相続人に債務(住民税)があることを知りました。Aさんは驚いて「死亡から3ヶ月以上経過しているがどうすればよいか」と相談に来られました。

 

相談後

住民税は住民の死亡によって免除されることなく、相続人の一人が代表で期限までに納税することになります。ただし、相続放棄によって納税義務はなくなりますが、この時すでに死亡を知ってから3か月以上経過していましたので、このままでは相続人として、Aさんは住民税を支払わなければなりません。そこで、最高裁判決を適用して、3か月の起算点は死亡を知った日ではなく、死亡後約半年経過した平成28年11月9日に、甲市からの書面が届いた日であるから、Aさんは初めて債務(住民税)の存在を知ったことになる旨の上申書を添付して相続放棄を申し立て、申立は無事に受理されました。

 

弁護士からのコメント

本件は死亡を知った日から3か月経過していましたが相続放棄ができた事案です。

民法によれば、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に・・・放棄しなければならない」とあります。しかし、最高裁判決によると、「相続開始時点では相続財産が全くないと信じ、そのように信じたことに相当な理由がある場合」には期間経過後であっても相続放棄が可能としています。Aさんの場合、母親と被相続人が離婚した平成20年以降約8年間、Aさんと被相続人との間で音信はなく、葬儀の際にも「被相続人には何も財産は無い」と親戚から言われていて被相続人の借金や財産について把握することができない状況にありましたので、被相続人には借金がないと信じたことに相当の理由があったといえます。

これらの特殊事情を裁判所に説明して、相続放棄を受理してもらうことが可能となります。