もしも誰かがお亡くなりになられた場合、その方の保有されていた銀行口座はその後どうなるのかご存知でしょうか。
「相続人である私の口座に自動的にお金が振り込まれるんじゃないの?」
「死亡届を出すと、市役所から自動的に銀行に連絡がいって、相続人の名前に名義変更されるんでしょ?」
残念ながらいずれも違います。
今回は、意外とその時になってみないと分からない、死亡後の銀行口座の扱いについて、事前に知っておくべき重要ポイントを解説します。
■銀行はこっちから言わなければ何もしない。
何となく銀行と役所が連携しているように錯覚している人もいますが、実はそんな事はありません。
ご家族の方が役所に死亡届を提出したとしても、その事を役所が銀行に連絡するわけではありませんので、基本的にはご家族のどなたかから、取引先の銀行に直接連絡するまでは、原則何も起りません。
■銀行でどんな手続きが必要?
ご家族様がお亡くなりになられたら、必ずその旨を銀行に連絡し銀行口座を凍結してもらう必要があります。複数の銀行と取引がある場合は全てに対して必要となります。
ちなみに凍結とは、イメージとしてはそのときの状態で口座を冷凍保存状態にして、凍結解除手続きがされるまでは、誰も預金が引き出せなくするという状態を言います。
【ワンポイントアドバイス】
たとえ家族とは言え、亡くなった方の保有していた銀行口座を探す事は結構大変です。財布にキャッシュカードが入っていればそこから辿る事が出来ますが、稀に隠し口座のような形で預金をしている方もいらっしゃるため注意が必要です。
ちなみに日本には、受取人不明のまま放置されている休眠口座がかなりあるそうです。
つまり、相続人も気がつかないままの預金口座が放置され続けているのです。
銀行側が数年後に時効を援用してくることはまずありませんが、こちらから気がつかなければ、銀行がわざわざ教えてくれるわけではありませんので、銀行口座については、極力お亡くなりになる前にご家族の方に詳細を伝えておく事をお勧めします。遺言書も有効にご活用ください。
■なぜ口座を凍結しなければならないの?
答えは簡単です。
口座を凍結しなければ、キャッシュカードと暗証番号さえわかれば誰でも預金口座からお金を引き出せてしまうため、相続財産の正確な金額が把握できなくなってしまうからなのです。
そのため、一度銀行に本人の死亡を伝えると、相続人の希望に関係なく口座は凍結となり、以後相続が完了するまでは原則一円たりともおろせなくなります。
「葬儀費用も出せないの?」
と聞かれる事がありますが、一部の金融機関では葬儀費用程度の金額であれば、払い出しを認める事もあるようですが、基本的にはできません。そのため、葬儀費用を亡くなった本人の口座にある現金で支払いたい場合は、死亡を伝える前に、予め現金を引き出しておく必要があります。
但し、あまり多額の現金を引き出すと、あとで凍結した時に税務署から目をつけられて税務調査の対象となる可能性がありますのでご注意下さい。
なお、一部の相続人が葬儀費用を自己負担した場合は、その分については相続分で調整する事が出来ますのでご安心下さい。
■いつまで凍結されるの?
口座が凍結される期間は、銀行が死亡を知ったときから、遺産分割が確定するまでの間です。その間については、法律上その口座にあるお金は「すべての相続人の共有財産」、つまり相続人「みんなのお金」、という扱いになっています。
これを難しい言葉で「可分債権」といい、本来であれば相続人の法定相続分については各相続人が自由に引き出せるはずです。
ですが、銀行は相続人一人ずつの払い出しには一切応じてくれません。
なぜなのでしょうか。
これは、遺産分割協議が必ずしも法定相続分通りに行なわれるとは限らないからです。
例えば、遺言書が見つかってそこに「愛人に預金の半分を遺贈する」と書いてあった場合、その口座にあるお金の一部は愛人の取り分となります。これを知らない銀行が漫然と払い出しに応じて相続人に現金を渡してしまうと、愛人から訴えられかねません。
ですから、基本はこれら相続手続きがきれいに終わって手続きが済むまでは、銀行が責任をもって預金を保護するのです。
これらの手続きについては、弁護士に相続の相談をした際に丁寧に教えてくれますので、まずは相続が開始したら早めに相談してみましょう。
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