日本では古くから実家は長男が継ぐ、という慣習や風習のようなものが色濃く残っていました。しかし、最近では個人を尊重する世の中になり、必ずしもそうではなくなりました。
そのため、一昔前は遺産相続にあたり、実家の土地や家を長男が取得すると言っても、その分け前に次男や次女が文句を言うことはありませんでしたが、最近では「それは不公平だ」と言って争いになることが多々あります。
また、問題となるのは相続発生後だけではありません。生前にした贈与(いわゆる「生前贈与」)についても、相続時になって問題となるケースがあります。
■具体例で考えよう。~相続人間のトラブル・不公平感~
“このたび父親が他界しました。相続人は次男である私を含め、長男と次女の3人です。
長男は生前から父親に家を建てるお金を援助してもらったり、大学への入学金なども全部出してもらったりしています。
それに対し私や次女はそういった援助は一切してもらっていません。それなのに、相続分が3人とも平等っておかしくないですか。”
このような問題は、至るところで起きています。ではどのようにして解決したら良いのでしょうか。
■特別受益として、相続財産から差し引く。
このように、被相続人から生前に受けていた贈与については、「特別受益分」として相続分から相殺することができます。
例えば上記の事例で相続財産が800万円で長男への生前贈与が100万円だとすると、次のようになります。
みなし相続財産:800万円+100万円=900万円
長男:300万円ー100万円=200万円
次男:300万円
次女:300万円
このように長男の相続財産は実質的に200万円となります。
■どこまでが特別受益なのか?
この判断は非常に難しく、一概には言えないというのが正直なところです。そもそも特別受益については民法903条に記載がありますが、金額や時期など具体的なことはあまり書いてないため、最終的には相続人間で話し合いをすることになります。
なお特別受益はあくまで相続人間の不公平感を解消するために設けられている制度ですので、例え特別受益があったとしても相続人全員が納得しているのであれば、これを無視して相続分を決めることも可能です。
特別受益分の話が遺産分割協議において出てきた場合は、相続人の間でトラブルになり、紛争化する可能性がかなり高くなります。遺産分割調停などに進むケースがあるということです。そのような場合は、早めに弁護士まで相談することをおすすめします。
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