贈与税・生前贈与のイメージ

相続税の法改正に伴い、相続税が増税になったと聞きました。相続税対策として、「生前贈与」が税金対策に有効だと聞きました。どういうことでしょうか?

 

遺産相続の発生時に多額の相続税負担を回避するためには、相続税対策として課税対象となる相続財産を予め減らすことが重要です。

そして、相続税対策としてもっとも有効な手法が「生前贈与」です。生前贈与と言えば、長期間、こつこつと、といったイメージがありますが、なぜ生前贈与にはそれなりの時間がかかるといわれているのでしょうか。

 

■贈与税の税率は、贈与額に比例して高くなる。

 

例えば1億円の金融資産があるとします。(今回は、細かな控除制度は無視して考えます)

これを生前に親から子供へ一括贈与(特例贈与とします)すると、次のような計算で贈与税がかかります。

 

まず、贈与税の基礎控除が110万円なのでその分を控除すると、残りは9890万円です。

 

9890万円×税率55%−640万円=4799万円

(※今回は端数を無視します)

(※直系尊属から20歳以上の者への贈与の場合とします)

(※軽減税率適用時なので、贈与額4500万円以上だと税率は55%、控除額は640万円)

 

なんと、贈与を受ける金額の半分近くを税金で持っていかれてしまうのです。こんなに無駄な事はありません。

贈与税の税率は、贈与する資産の価額に比例して10%〜55%まで上がっていきます。つまり、多くの財産がある場合は、一度に多額のお金を贈与すると、贈与税率も自ずと高くなるという事なのです。

 

例えば、1億円を1000万円ずつ10年に分けて贈与したと仮定すると、年間110万円の基礎控除を利用すると、残りは890万円ですから次のようになります。

 

890万円×税率30%−90万円=177万円

(※端数を無視)

(※直径尊属から20歳以上の者への贈与の場合)

(※軽減税率適用時なので、贈与額1000万円以下だと税率は30%、控除額は90万円)

 

これを10回、連年贈与として行なったとすると、

177万円×10回=1770万円

結果的に同じ1億円を贈与したにもかかわらず、贈与税の総支払額が3029万円も安くなるのです。

 

これが、時間をかけて生前贈与をする最も基本的なメリットなのです。

 

 

■生前贈与の基本は、基礎控除のフル活用にある。

 

生前贈与において、最も活用すべき制度、それが「基礎控除」です。暦年課税方式の場合、年間110万円までの贈与については贈与税が非課税となります。なおこの110万円というのは、一人の人から貰った額ではなく、複数の人からもらった額の合計額の事です。なぜなら、贈与税を納税するのは、贈与を「受けた側」だからです。

 

たった110万円と思うかもしれませんが、例えばこれを計画的に10年間フル活用したとします。すると、単純計算で1100万円の資産を非課税で贈与する事ができるのです。

 

もしも単年度で1100万円を贈与したとすると、次のような贈与税がかかります。

 

1100万円−110万円=990万円

990万円×税率30%−90万円=207万円

 

つまり、207万円の節税に成功した事になるのです。

 

ただし、このような連年贈与(定期贈与)は税務署から税金逃れを指摘される可能性があるため、実際に基礎控除を活用して連年贈与をする場合は、次の事に気をつけましょう。

 

○        税理士や弁護士などの専門家に依頼して、贈与契約書を作成してもらい記録を残す。

○        できれば毎年全く同じ金額の贈与は避けて、時々少額でもいいので贈与税が課税される贈与を織り交ぜる。

○        贈与した後は、贈与を受けた人間が自分自身でその資産を管理できる状態にしておく。(形だけ贈与してもだめ)

 

生前贈与は、計画的に実施する事で非常に大きな効果を発揮しますが、裏を返せば間違った対策を講じてしまうと、多くの年月を無駄にしてしまいます。そのため、生前贈与を計画する場合は、弁護士や税理士などに必ず相談しましょう

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