概略

30年前に母親と離婚し交流のなかった父親の相続債務について、死亡の知らせはあったものの、相続財産は全く無いということだったので、放っておいたところ、死亡後1年以上経過して債権者から請求されたため、相続放棄した事案。

 

相談前

Aさんの父母は30年前に離婚しており、Aさんは母親に引き取られたので、父親Bさんとは30年間で、数回程度しか会ったことがありませんでした。

平成28年5月12日にBさんが死亡しましたが、死亡の連絡を受けたのは葬儀後1か月経ってからで、特段お墓参りに行くわけでもなく、そのままにしておりました。

このようにAさんは、Bさん死亡後、相続に関しては何の手続きを取らすに1年以上経過したところ、今般、債権者XからBさんの債務を支払うよう通知を受けたので、何とか相続放棄できないものかと、相談に来られました。

 

相談後

Aさんは、30年間もBさんとは疎遠であったこと、また、死亡の連絡を受けた当時もBさんの債務を知るような情報は全くなかったことから、相続放棄期限の3か月を経過しておりましたが、最高裁判決を適用して、3か月の起算点を今回通知を受けた時点にして相続放棄を申立てることにしました。申立は、無事に受理されました。

 

弁護士からのコメント

本件も、死亡後(相続開始を知った時から)3ヶ月が経過しても相続放棄できる典型例の一つです。

Bさんは再婚をしませんでしたので、Aさんが唯一の相続人となります。Bさんの葬儀後1か月くらい経過した平成28年6月21日に、AさんはBさんの死亡の知らせを受けたので、そこから3か月経過した平成28年9月中旬   頃には、熟慮期間の3ヶ月は経過してしまい、相続放棄はできないように見えます。

しかし、Aさんは幼いころ母親に引き取られ、Bさんとは30年近く別居しており、交流もほとんどなかったので、Bさんの死亡を知らされた当時、Aさんに対しBさんの相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があると考えられます。そうすると熟慮期間は、XからBさんの借金について連絡を受けた平成29年3月6日と判断出来ます。

そこでAさんが、Bさんと疎遠であった事情を詳しく説明した事情説明書(上申書)を作成して本件相続放棄申述を申し立て、無事受理されました。
事情説明書(上申書)はこちら ☞

死亡後長期間が経過し、3か月の期間が過ぎていると思われる場合でも、相続放棄ができる可能性は十分ありますので、諦めずに、3か月を経過した相続放棄の扱いに熟知した弁護士に依頼することを強く勧めます。

3か月経過型は難しいので、ご自分で申立てると、「却下」される恐れがあります。「却下」されてから慌てて弁護士に依頼しても、時機を失していることもありますので、ご注意ください。

 

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